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ラブレターフロームカナダ

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幸子の日記4、28~最終話

第28話、ためらい



その日はウサギちゃんを連れて
ダウンタウンに買い物に来ていた。
コアラちゃんはまだつわりが治まらないらしく
家にずっと閉じこもりっぱなしだった。


私はグラントの

「暖かいところへ行こう、、、」

あの一言によって、
その日は買い物パワー全快であった。



「ねね、これってどう思う?イブニングに食事行くときなんか
いいんじゃない?」


ウサギちゃんもマイクと旅行の計画をしていた。
私たち二人は
高校生の様にしゃぎまくって買い物をしていた。
楽しかった。


「うわ~、これってマイク好きそう~!
みて、このスリット具合、絶対好きだよ~」

こんな言葉が何の引っ掛かりも無く出てくるようになっていた、
全てはグラントの愛のおかげだった。


ラスベガスに行くというウサギちゃんはセクシーな
ドレスを2枚買った。
私が進めるマイクウケしそうなドレスは買わず、
自分が着たい物ばかりを買っていた。
彼女には“男好み”と言う言葉は無縁になってしまったのだろうか、、、。

私はビキニ一枚とそれに合わせてパレオを買った。
イブニング用には
黄色いポリの肩なしドレスを買った。
すべては彼の好みに合わせて買った。
私はいくらたっても
“グラント好み”から離れられなかった。


買い物も終わり少し疲れたので
二人でスタバに来た。
良くクラスメートと来た場所だった。


「ねね、マイクから聞いたよ、、、
ニックとグラントのこと、、」

「あ、知ってたんだ、、」

「で、どうするのよ、、」

「うん、、、」

まだどうしていいか分からなかった。
早くニックには告げなければならなかったが、
チャンスを逃し続けていた。




「こんな私が言うのもなんだけど、
早く言ってあげないとかわいそうよ、、
幸子のこと好きなんだから、、、」

ウサギちゃんは変わった。

きっとマイクによって
彼女の幸せがどういうものなのか
はっきりとした形で見え初めていたのだろう、
彼女はマイクとの生活を
何のためらいもなく、前を向き、歩き始めていた。

それは今の私には無いもののようだった。


「そうだね、、

今夜、会おうかな、、」



もしニックと話し合いが出来れば
私も前を向いて歩けそうな気がしていた。
ゴールが一つしかない道を
堂々とためらわずに歩きたかった。


「頑張るよ、今夜、、、」

第29話、別れ


私たちはタイレストランに来ていた。
ニックは日本食を食べたがっていたが、
別れ話をするのに、
他の日本人の見世物にはなりたくなかったので、
違うレストランを選んだ。

会話のほとんどは
ニックのカフェの話と探さなければならない
二人の住居の話だった。
テーブルの料理を食べながら
くったくなく笑っている彼を
愛しいと思いながらも
心のどこかで、
早く話を切り出したいと思っている別の自分がいた。

時間は刻々と過ぎ、
早く言わなければと焦っていた。


「あのね、ニック、、、、
今日実は、、、話したいことがあったんだ、、、」


「うん、どうしたの?」


「あの、、、
二人のことなんだけど、、」

口から心臓が出るとはこのことを
言うのだろうか、
次の言葉を発するのに
息が止まりそうだった、、。


「別れて欲しいの、、」

声が震えていた、、。

ニックは箸を止め、
ゆっくりと私を見た。

「どうして?」

少し頬がこけたニックの顔が青白く見えた。

「ごめんなさい、、、」

申し訳ないという気持ちと
ニックを傷つけてしまった後悔と、
泣けば許してもらえるかもという
色んな気持ちが混じって
涙があふれてきた。


「グラントと一緒になりたいの、、」



彼は怒って店を出るんじゃないかと
予想していた、、、。


悪いのは私なんだから、
私を憎み、怒って店を出て行ってくれればいい、、
そうすれば、この罪悪感から
少しは開放されるような気がしていた。





「そうか、、、」

彼は頭を少しかき、
目をつぶった。

しばらくの間沈黙が続いた、、、。



「彼と一緒になるんだ、、、
知っていたよ、、
日本に帰ったんじゃなくて、NYに居たって事、、」


やはり知っていた、、。


「彼と一緒だったんだね、、」


彼の笑おうとしている顔がいがんで見えた。


その後も
私たちは会話の無いまま向かい合っていた。
しばらくして彼から
店を出ようと言われ、
席を立った。

息苦しかった店の空気とは違い
外に出るといくらか息ができた。


「幸子、、ごめん、、今君になんて言葉をかけていいか
わかんないんだ、、、僕も頭の中はかなり混乱してるよ、」


ニックは立ちどまり、
私の方を申し訳なさそうに見た。
目には涙があふれていた。
彼の手は震えて、
それを止めるかのように
両手をポッケにつっこんだ。
自分の居場所が見つからない子供のように
おどおどしていた。

彼をこういう状況にしてしまったのは
全部私だった。

さっき乾いた涙がまたあふれてきた。


「ごめんなさい、、、」

私はニックを力いっぱい抱きしめた。
抱きしめて支えないと、
今にも彼は折れそうだった。

「ごめんなさい、、」

ニックは何も言わず、
彼の嗚咽が私の耳に響き渡り、
そして心を突き刺した。


もう一度彼を力いっぱい抱きしめたが、


彼は私を抱きしめてはこなかった、、、。

第30話、石の体



しばらくは何もする気がなかった。

その日は一日中、
ベッドの上で丸くなっていた。

時折電話をみては、
グラントに電話をしようかと思ったが、
心が重く
体全体が石のように固まっていた。



再び受話器に手を置いて
NYの番号をかけようと試みたが、
指が途中で止まった。

自分が全てグラントの物になったという朗報の裏には
ニックを傷つけた昨日があった。

そんな話を気持ちよくグラントに伝えることなど
できなかった。





最後に見たニックの顔が忘れられずにいた。


私のした事がどれだけ彼を傷つけようとしていたかなど
考えもしなかった。

ただ、早く彼と別れてNYへ行きたいために
自分勝手にニックの心を弄んでしまった。

ニックとの別れは私が想像していたものとは
大きくかけ離れすぎていたのだ。
彼と別れることができれば、やっと全てのことがクリアになって、
後はグラントの胸にとびこめば幸せになれるものだと思っていた。



我ながら最低な女だと
その日は自分をずっと戒めていた。




「幸子?電話が入っているんだけど、、」

コアラちゃんだった。
部屋のドアを開けずに話しかけてきた。
きっと一日中泣いていた私を気遣ってのことだったのだろう。


「今日はなんか疲れたから、、寝たって言ってもらっていい?」



「グラントなんだけど、、、」


グラントの名前を聞いて体が動き出した。

今彼の声を聞けば
いくらか元気が出そうだった。



「じゃ、電話出る、、、、有難う、、」

ベッドに座りなおし、
服の袖で涙をぬぐい受話器をとった。

「幸子?」

優しいグラントの声だった。

「グラント、、、電話有難う、、、嬉しい、、」

「なんだか今日は元気がなさそうだな、、」

グラントは私の異変に気がついていた。

「うん、実は昨日ニックに話した、、」

「そうか、、」


グラントは一呼吸置いた。




「今はあまり深く考えず、ゆっくりしなさい、、」


グラントの声は私の固まった石のような体を
砕いていった。
受話器からは彼の声とともに彼の息遣いを感じていた。
目を閉じて
彼を近くに感じようとしていた。


「うん、そうする、、」

ニックを傷つけ、
そして自分も傷ついてしまったが、
その出来事は起こらなければならなかったことなのだ、、
彼と一緒になりたいのなら、、。



「ワインを一気に飲んで、その後は面白い映画でも見たらどうだ、、、
考えるのは明日でもいい、、」


私は優しい彼の心に包まれようとしていた。

これからもずっと彼を愛したかった。

第31話、盆と正月



「今日の気分はどうだ?」


次の日、
私を気遣っていたのだろう、
グラントが電話をくれた。

「うん、昨日よりましになりました、、
きっとあなたと電話で話せたからだと思う、、
有難う、、」


二人の距離がもどかしく、
はやくグラントに会いたかった。

カナダ滞在を早めに切り上げてグラントの下へ帰ろうと
昨日、グラントからの電話を切った後考えていた。


「それでね、、ちょっと早めにNYへ帰ろうと思うの、、
できれば明日、、、」


「ああ、その件で僕も電話したんだ、
幸子、もう少しカナダの滞在を延ばしてはどうだ?
実は、
今やっているプロジェクトがまだ終りそうになくて、
9月に入り込みそうなんだ、、
来週はボストンの本社に行く予定だし、
今幸子が帰ってきてもたぶんずっと一人だろう、、」


グラントのプロジェクトが長引いていた。
必然と旅行に行く日も延期になった。

「そうなんだ、、、、」

明後日にはグラントに会えると思っていた私には残念なことだった。


そんな私の気持ちを言葉から読み取ったのか
グラントが話を切り替えた。

「それから、、幸子の誕生日は一緒に祝えないけれど、
もう旅行のチケットは取ったぞ、、」


「え?本当?どこ?」

心が少しはずんだ。

「ベネズエラはどうだ?知り合いがビーチにコテージを持っている、、
そこで一ヶ月ぐらい二人でゆっくりしないか、」

ベネズエラ、、、
聞いたことはあるが、どんなところか知らなかった。
それでもグラントと一緒にいれるなら私はどこでもよかった。



その後はたわいもなく
色々とおしゃべりをした。
私の味噌汁の味が恋しく
自分で作ってみた話、
ツインタワーに上ればいつも私を思い出す話など、
私を落ち着かせてくれる話をいっぱいしてくれた。

後10日もすれば
彼に会える、
その後は一緒にベネズエラで一ヶ月も過ごせる予定だった。


最後に彼は

「I love you,,,」

と言ってくれた。


初めての彼からの愛のささやきと
一ヶ月のベネズエラ旅行、、、

私にとって、それは
盆と正月が一年間休みなく続くよりも
嬉しいことだった。

第32話、三割バッター



32歳になった。


本当ならば今回の誕生日は
グラントとともにNYで過ごすはずだった。
今度こそやっと好きな人に祝ってもらえると思っていたのに、
それも無理だった。


野球で言えば空振り三振ってとこだろうか、
勢いよく飛ばすつもりが
空振りしてしまったのだ。

初めて大好きな人に誕生日を祝ってもらえると意気込んでいたのに
空振りした。

私の恋愛はいつもそうだった。
2割にも満たない
1割バッターだった。

ことごとく空振りし、
やっと塁に出れるかと思えば
デッドボールかフォアボール。

それでもニックやグラントに会い、
塁に出れたことを喜んでいた。
押し出しでもなんでもよかった、
ホームベースを踏めるのなら、、。



コアラちゃんとポールによって、
小さいながらも
暖かいお誕生日会を開いてもらった。

グラントが隣に居なかったと言えど
心に残るパーティだった。

コアラちゃんはまだ完璧につわりから抜けておらず、
8時になればパーティはお開きになった。


自分の部屋にもどり、
再び窓の外を見た。

夕方からずっとコアラちゃんの家から少しはなれたところに
車が止まっていたのだ。


ニックの車だった。

きっと彼は電話もかけることが出来ず
車の中で私は待っていたのだろうか、、、

何度が玄関に足を向けたが、
階段の途中で自分の部屋に引き返した。

そんなことを2時間ぐらい繰り返し
もう窓の外を見ないことにした。

今更彼と話したところで
未練以外の何も残らないと思っていた。
会えば辛くなるだけだった。




次の日コアラちゃんが朝早く
私の部屋に来た。

「これ、玄関においてあったんだけど、、、
誰からだかわかんないんだけど、、、」


白い包装紙に包まれた小さい箱だった。
ピンクのリボンとともにカードが付いていた。


「幸子へ」


箱の中を空けてみると
シルバーのピアスだった。

覚えていた、
昔私が欲しがっていたシルバーのピアスを、、、。


カードを空けてみた。

一行だけの短い文章だった。


「君の幸せをいつまでも祈っている」


ニックと初めて出会った日のことを思い出していた。

生まれて初めてクリーンヒットを打てた
あの日だった。
彼はウエイトレスの綺麗な女性ではなく
コアラちゃんでもなく
私だったのだ、、、。


「有難う、ニック」


そう
心の中でつぶやいた。



第33話、夢の続き



荷造りを終えたのは24時を過ぎていた。

その日の夜はマイクとウサギちゃんと3人で
食事に出かけていた。
最後の夜ということで
マイクが私を食事に連れて行ってくれたのだった。

帰ってきたのは22時を回っていて、
それからすぐにシャワーを浴び
残っていた荷造りを終えた。

グラントの言っていた日にちよりは少し早めだったが
帰ることにしていた。
ブルーの日本滞在話も気になっていたし
それにグラントがボストンから帰る前にNYに帰りたかった。
暖かい部屋を作って、彼を出迎えたかったからだ。



ベッドに入ると
いつもより早く眠りの森へ行けた。
そして、その日も夢を見た。

あの夢の続きだろうか、、、



また再び出航だったのだろう、
船がゆっくりと動き出した。

霧が立ち込めていて50センチ先も見えない甲板に
私は立ち、
誰かを探していた。

「幸子、、、」

誰かの声が聞こえる、、、

「マイク?
ニック?

いえ、違うわ、、

グラント、、、」

グラントを探していたと気がついた私は
彼の名前を叫んだ。


「グラントーーーー!」


霧に向こうに彼の姿がうっすらと浮かんだ、、
グラントは岸に立ち私に手を差し伸べていた。

船に乗り遅れたのだろうか?

私は船の外に身を乗り出し
いっぱいいっぱいに手を伸ばしたが、、

彼の手には届かなかった、、、。






朝の5時に電話の音で
起こされた。

マイクからだった。

彼が何を言っていたかは
はっきりとは覚えられなかった。


しばらくベットに座り、
マイクが言ったことを思い出していた、、、。

グラントがNYで交通事故に巻き込まれたというのだ。

「うそ、彼はボストンにいるはずよ、、、」


彼の言う意味がすぐに理解できなかった。
頭のなかで、
マイクの声をリフレーンのように
繰り返していた。




「彼は昨日NYに戻ってきていたんだよ、、、」

彼は早めに切り上げて帰ってきていた。


「さっきグラントの息子さんから電話があって、
今息をひきとったと、、、」

第34話、グラント



あれから1ヶ月が過ぎた。

涙も枯れはて、
何もする気がない毎日を過ごしていた。


私はあの部屋へ戻ることが出来ず、
バンクーバーで一人部屋を借り、住み始めていた。





結局彼は
私を置いて、一人でどこかへ行ってしまった、、
私のこの気持ちを残したまま、
姿を消してしまったのである。

彼に対して何度か怒りのような悲しさがこみ上げてきたが、
その感情はどこにも行き場が無く、
ただただ雨のように降り注ぎ、
そして、私の心に
海のごとく溜まっていった。




耳につけた真珠のピアスを指でなぞりながら、
彼と過ごした数ヶ月間を色々と
思い出しては
涙とともに、深いため息をつくばかりだった。


昔、
母が言っていたあの言葉をもう一度思い出していた。


「結婚式などのお祝い用の黒留袖はどうでもいいんだけどね、
喪服はいつももっとかなきゃだめよ、
ほら、結婚式はとりあえず日取りを決めるから、
服を買いに行く時間があるけど、
お葬式だと、突然でしょ、、、」


皮肉にも、グラントがくれた真珠のピアスを
彼のために使うことになってしまったのである。




それ以外に、彼からもらったプレゼントは
すべてNYのアパートに残してきた。

そして、マイクの計らいで、
NYの全ての荷物は
グラントの息子が直接アパートへ行き、
私の分は
送ってもらうことになっていた。



ただ数点、直接会って渡したいものがあるらしく
マイクを通して彼に会うことになっていた。



グラントの息子は、
自分の父をかどわかした自分と同じ年頃の
女を見てみたかったのだろうか?

彼の息子と会うことに
かなりの抵抗があった。



本当ならば
私は幸せになるはずだった、、、。
グラントさえ戻ってきてくれれば、
それで十分だったのだ。






あの日見た夢の中で、

何故もっと必死になって彼の手を掴まなかったのかと、

夢の中の出来事さえも
後悔していた、、、。

第35話、思い出



グラントの息子が
明日か明後日に私に会いたいらしいと
マイクから電話があった。

事は早めに済ませた方がいいと思い、
明日、
私が住んでいる、
ダウンタウンのアパートの近くにあるカフェで会う約束をした。


私の部屋でも良かったのだが、
グラントの息子と言えど見ず知らずの他人、
外の方がいくらか気負わないでいいだろうと判断したからだった。


その頃の私は、
グラントのために毎日を過ごしていた。

彼からもらったプレゼントを一つ一つ取り上げては
汚れているところをふき取ったり、洗ったりしては、
クローゼットの中に時間をかけてゆっくりと整理していった。

二人で撮った写真もかなり少なかったが、
かわいいアルバムを買ってきて、
月日ごとに並べて思い出アルバムを作ったりした。

こうやってグラントとの事に毎日時間を費やすことで
心が安らいだ。
そうすれば
彼をもっと近くに感じることができ、
そして彼との思い出も
進行形になるような気がしていたからだ、、。


グラントの息子に会うのも、
それの一環だったのかもしれない、、、。



私がカフェに着くと、
すでに彼は座っていた。

仕立ての良い、ベージュのスーツに黄色いタイをしていた。

「幸子さんですか?」

彼は私を見るなり立ち上がった。


「グラントの息子のディーンです。」

軽く挨拶を会えた後、
私は席に着いた。
彼は昼食を済ませたかと聞いてきたので、
済ませたと答えた。

どこと無くグラントに似ていた。
目の辺り、口元、顔の輪郭、、、、
少し小太りな感じまで似ていた。

「実は、父からあなたの存在は聞いていたんです、、、
大切にしようと思っている女性がいることを、、、」

彼は少し笑顔を見せた。
笑うともっと彼に似ていた。

「でもこんなに若かったなんて聞いてなかったので
びっくりしました、、」

彼は私の顔をまじまじと見つめていた。
恥ずかしくなり
彼から目を外し、カップを見つめた。


「あ、そうだ、これを渡そうと思って、、
郵送でも良かったのですが、直接あなたにも会いたかったし、、」


そういいながら、
彼は小さい封筒をテーブルに置いた。

中を空けてみると
小さいティファニーの箱と白い封筒が入っていた。

「今、明けて見ていいですか?」

「ええ、あなたのものですから、ご自由に、、」

ティファニーの箱を開けてみると、
そこには3カラットぐらいあるだろうと思われる
エンゲージリングが入っていた。

リングの内側にはこう書かれていた。

「GRANT to SACHIKO」

彼は本気で私と結婚するつもりだったのだ、、。

自分の心臓を
誰かにわし掴みされたような
痛みを覚えた、、、
人前では泣かないと誓ったのに
その痛みによって、涙があふれてきた。
そんな惨めな私の姿を
ディーンはまだ見続けていた。

涙をハンカチでぬぐった後、
白い封筒を取り出した。

表には

「Dear 'S'」

とだけ書かれていた。


「Sって幸子さん宛だと思って入れておきました、、
悪いと思ったのですが、中を読んじゃって、、
内容もあなた宛だと思います、、」

そういいながら、彼は腕の時計を見た。


「じゃ、そろそろ私はこの辺で、、昼からミーティングが
あるんですよ、、、」

私たちは一緒に席をたった、
カフェのドアを押しながら
彼が再び私の方を見た。


「それにしても本当に似てますね、、、
父の言っていた通りだ、、、」

「え?」

「父が“また会えたんだ”っていうのも無理はないな、、」

「じゃ、また何かあれば連絡ください」

そう言って彼は自分のビジネスカードを私に渡し
去っていった。

彼のこのなにげない言葉で
これから私は悩まされることになった。

もう二度とは戻ってこない彼に恋焦がれながら
会ったこともない昔の女性に嫉妬する日々、、


彼との事を思い出に変えるまでには
かなりの時間がかかりそうだった。

家に帰り
大好きなボサノバの曲をかけた。
アールグレイに少しの砂糖とジンジャーを入れた。

紅茶を手に持った私は
あまり景色の良くない窓際に置いてある椅子に腰掛けた。

準備万端にして
グラントの手紙を開けたのだ。


そこには2枚の紙が入ってあった。

一枚は古すぎたため黄ばんだ紙だった。
どこかの本から破ったのか、
印刷の文字が書かれてあった。

もう一枚は新しい最近書かれた手紙だった。
彼の直筆っぽかった。


両方の紙の冒頭には

「Dear “S”」

と書いてあった。

とりあえずは、
古いほうから読んでみることにした。



「Dear “S”

When you are old....



When you are old and grey and full of sleep,

And nodding by the fire,take down this book,

And slowly read,and dream of the soft look

Your eyes had once,and of their shadows deep;



How many loved your moments of glad grace,

And loved your beauty with love false or true,

But one men loved the pilgrim soul in you,

And loved the sorrows of your changing face;


And bending down beside the glowing bars,

Murmur,a little sadly,how Love fled

And paced upon the mountains overherd

And hide his face amid a crowd of stars.

W.B.Yeats 」






私と似た女性の事を思って読んだのだろうか、、



別れの詩だった。


第37話、Dear“S”2




その黄ばんだ紙切れを胸に押し当てた。
そして
再びディーンの言った言葉を思い出していた。



父が“また会えたんだ”っていうのも無理はないな、、



行き場のないグラントへの質問が
押し寄せる波のように私を包み込んだ。

心が動揺した。
そして再び涙が私の頬をつたった。


しばらくして、
深く深呼吸した後、
もう一枚の手紙を手に取り、
読み始めた。




「 Dear“S”


Such eyes do wield untruly hearts

to endless pastures of demise

Hands that cup the liquid of my soul

Should i not touch the face of the sun


Then fall shall i

throught mists of time

til dust

does speak of my breath.... - G - 」



彼がなにを思ってこれを
書いたのか知りたかった。

ディーンは2つとも私宛だと言ったが、
本当なのかどうか知りたかった。

いや、それだけじゃなくディーンが知っているグラントの
全てが知りたいと思った、

そう、私に似ているというあの女性のことも、、、。




さっきもらった名刺を再び取り出した。

そこには、
ディーンの自宅の電話番号が鉛筆で書かれていた。


ただ、彼の過去が知りたい、
それだけのことで彼に電話をした。






私はタイムマシーンに乗ろうとしていた。



私の知らないグラントを見つけるために
過去へと遡る道を
ディーンが案内してくれようとしていた。

第38話、さゆり



その週末にディーンと夕食をとる約束をした。

彼が知っているグラントの全てのことを知りたかったからだ。




「おまたせしてすいません、、」

彼は少し遅れてきた。
グラントの会社で働いている彼は
グラントがいなくなってしまった後、
彼が手がけていた仕事の始末やらなにやらで
かなり忙しいと言っていた。


私たちはインディアンレストランに来ていた。
グラントが一度連れてきてくれたところを
私が指定したのだ。


たわいも無いおしゃべりをした後、
彼が唐突に言い出した。


「いやあ、、本当に似てますね、幸子さんは」

彼は少し笑みを浮かべた。
その顔がグラントに似ていて
私の心をしめつけた。

「本当にびっくりするぐらい似ている、、」

「誰にですか?」

「大昔の話だし、もう時効だからいいですよね、、」

彼は自問自答するように話し出した。


グラントは若い頃、仕事の関係で、日本の京都に5年ほど住んでいた。
そこで知り合った日本の女性と彼は激しく恋に落ちたらしいのだが、
その後、彼女が突然行方をくらました。
ビザが切れた後も彼はしばらく探し続けたが、
仕事のこともあり、その時は諦めて、彼一人だけカナダに戻ってきた。

その後何度か日本に戻り彼女を探そうとしたが、
前回の違法滞在で、
日本に二度ともどれなくなってしまっていた。


その後、ディーンの母親と知り合い、結婚。
ディーンともう一人の男の子をもうけ幸せに暮らしていた。
だが、グラントは彼女を忘れることが出来ず、
結局それが原因で15年間連れ添った夫婦は別れることになった。

ディーンの母親もいつも別の女性の姿を探し続けている夫と
いるのが辛かったらしい。



ディーンは何故その女性が姿をくらましたのかまでは
聞いていないと言っていた。






「小さいときはね、父親の気持ちなんて理解できませんでしたよ、
なんで私の母親を幸せにできないのかと、、、、


でも、もう私も30歳になって、人並みに恋愛し、別れを、繰り返して、
今は父親の気持ちが理解できるようになったんです、、


最近です、さゆりさんって女性の話しを父親が話し出したのは、、、

彼女の白黒の写真を一度だけ見せてもらったことがあるんです、、
あの写真を見せたときの父親の顔が忘れられません、、

本当に愛していたんですね、、さゆりさんってひとのことを、、」



「その人に私が似ているんですか?」


「こんなこと言ったら気を悪くするかもしれませんが、、、
あなたはあの白黒の写真から出てきたんじゃないかと思うぐらい
似ています、、」




グラントは私を愛していたのだろうか、、、

彼女に似ている私を愛していただけだったのではないだろうか、、。


誰に頼れることもできない不安が
私を襲った。
平静を装うとしたが、
心の動揺を隠せずにいた。


知らなくてもいいものを
自分からディーンを誘い
聞き出したのだ、、。
つくづく自分を馬鹿だと思ったが、
それでも彼の全てが知りたいと思えた。



「またこうやって会ってください、、」

彼が会計を済ませながら
私の方を見た。

「ええ、、」

と軽く彼の質問に答えながら、
彼の仕草とグラントの仕草を重ねていた。






「京都に行ってみよう、、」


そんなことをおぼろげながら考えていた。

第39話、親子丼



それからも
私はディーンと数回会った。

彼がどういう目的で私に会いたがっていたのかは
分からなかったが、

私は少ずつ、グラントに似すぎている彼を好きになり始めていた。


彼はグラント同様美味しいお店を良く知っていた。

彼と同じようにワインを飲み
彼と同じような口ぶりで話した。

笑ったときに
左に小さいえくぼが出るところまで
一緒だった。



「今日はなんだか顔色が悪いですね、、」


「ええ、なんだか最近食欲もなくって、、」



グラントが居なくなってから
食欲がなかった。

ウサギちゃんやマイクはそんな私を心配して
時折食事に誘ってくれたが
食べる気があまり起こらなかった。

このまま食べないでいると
彼に会えるんじゃないだろうか、、、
そんなことも考えたりしていた。




レストランを出た後、
二人肩を並べて歩いていた。
私の家まで歩いて送るためだった。


街灯に照らされる
彼の横顔を見た、

鼻の形まで彼に似ていた。
違うところといえば
彼のほうがグラントより少し面長で
彼のほうがずっと若かった。


私のアパートの前についた。


「今日は有難う、一緒にまた食事ができて楽しかった、、


最初は、父がどんな女性と一緒になろうとしていたのか
興味本位で君に会ったんだ、、、


そして君という女性を知って安心したよ、、

君がこういう女性でよかった、、」


そういい残して彼は去っていった。




去っていく彼の後姿を見ていた。



彼は私のことをどう思っているのだろうか、と
考えながら
彼の後姿を見送っていた。

彼が私の事を好きになってくれれば、、
などと変な下心があったのかもしれない。



そんなことは起こらないと分かっていたのに、
ディーンとこのまま会い続ければ
30年後にグラントに会えそうな

そんな
気がしていた。

第40話、後悔



ディーンに再び電話をした。

彼に会いたかったこともあったのだが、
一つ聞き忘れたことがあったからだ。


彼にそのことを告げると、
それならば、また二人でご飯を食べようと
会う約束をしてくれた。

体調はまだよくなかったので、
レストランで食べるよりも
チャイニーズをオーダーして
私の部屋で食べることになった。

少し無理をしてでも会いたかった。



夕方になり、彼は
約束の時間きっちりに現れた。
週末だけあって、
彼はかなりカジュアルな格好だった。


ワインを注ぐ振りをして、
しばらく
ディーンを見ていた。

薄暗いキャンドルの向こうの
彼はグラントだった。

錯覚を起こしそうなほど、
似ている彼を愛しいと思い始めていた。



「実は今日、聞きたいことがあって、、、」


「ああ、電話で話していたことだよね、、」


「実は、京都に行こうと思っているんです、、」


「京都へ?」


「ええ、、、彼の住んでいたところを見に行きたいんです、、
出来れば、、その、、私に似ている女性のことも、ちょっと探してみたいんです」



ディーンは頭をすこし掻いた。

「なんだか悪いことをしてしまったね、、
僕がさゆりさんの話をしたから、、、


あれから、ちょっと反省していたんだ、、
君に色んな事を言いすぎたんじゃないかって、、


もう忘れた方がいい、遠い過去の女性だし、
どこにいるかもわかんないんだし、、」


「ええ、それでもいいんです、行って自分で色々と確かめてみたいんです、、

それで、もし何か知っていることがあれば、
些細なことでもいいから教えてもらえないかな、と思って、、、」




しばらくして彼はポツリポツリと語り始めた。

彼女は祇園の近くに住んでいた女性だったこと。
父は彼女に何枚かの着物を祇園の近くの店で買ってあげたこと、、。



食事も食べ終わり二人でワインを飲んでいた。

彼が持ってきたワインも、いつもグラントが飲んでいるものだった。


彼と過ごした短い月日を思い出していると、
自然と涙があふれてきた。

泣き止まないと、と思えば思うほど、
涙は私の心に反比例した。



ディーンは困り始めていた。
泣いている私を
どうあやしていいのかわからなかったのだろう、、


私も心のどこか期待していたのかもしれない、、
グラントのように抱きしめてもらえるかも、と。



ただ、彼は戸惑いながら
ハンカチを渡してくれた。



目の前にいる、
困り果てたディーンを見て、
彼にグラントの影を求めていたことを
後悔していた、、、。

彼はグラントじゃないんだ、、、。



ただ、涙は止まらず、止め処も無く流れ続けた、、、。


肩が寒かった、、、。

ただ誰でも良かった、
グラントのような暖かい手で抱きしめてくれるならば、、。


第41話、得たモノ



日本に帰ろうかと考えていた。

カナダに居てもグラントを思い出すだけだし、
それにディーンにどんどん引かれていく自分も嫌だった。

彼にグラントを追い求めすぎて、
ディーンが少しでもグラントと違う仕草をすれば、
私はイライラしたりしていた。

そんな自分が腹立たしかった。



全てを断ち切るには
新しい場所で一からやり直すしかないと思っていた、
そう2年前、
カナダで新しく人生をやり直そうと決めたときのように、、。

結局私は負け犬のまま
カナダでの生活を終ろうとしていた。

私を馬鹿にしていた周りの人たちに
見返してやろうという気持ちでやってきたのに、

何かを手に入れるどころか
状況は前よりも悪くなり、
私は負け犬ぼろぼろ幸子になっていた。

でも、もうそんなことはどうでもよかった。
人が何を言おうがどうでもよくなってきていた。

きっとこのカナダ生活で手に入れたものは、
この図太い根性だけだったのだろうか、、

それでもこの図太い根性があれば、
これからは、前よりも生き易くなるだろうと、
自分に言い聞かせてもみた。




ただ、体調がずっと悪かった。
そのために、日本行きをずっと延ばしていた。

こんな青白い顔で帰れば
母親が心配するだろうと思ったからだ。






次の日、
重い体を引きずって、
病院に行くことにした。
ずっと寝てても治らなかったからだ。


どこに行っていいか分からず、
ニックが使っていた
ウォークインクリニックに行くことにした。

きっと彼の病気もだいぶと良くなっているだろうから、
病院に鉢合わせになることはないだろう、
と、安易に考えていた。
ただ、
こんな惨めな自分の姿を彼に見せたくなかった。





ドクターは色々と私の症状を聞いた後、

「じゃ、尿検査をしてみますか、、」

そう言ってトイレの位置を指差した。



ドクターの言われるとおり検査をすませ、
先ほどドクターが居た部屋に戻り、
一人結果を待っていた。


ドクターは戻ってくると
すぐにカルテを取り、何かを書きだした。

そして私の方をみるなり
少し微笑んで
こう言った。




「妊娠してますね、、、、」

第42話、決心



グラントの子供だった。

あの数少ない性生活の中で出来てしまっていたらしい。


その事実に
ただただ動揺していた。


普通ならば
子が授かった吉報は、
家族全員が喜ぶものなのだろう、、

夫がいて自分の両親、相手の両親、
祖父母までもがみんなして
喜ぶものなのだろう、、




だが
私の場合は違った。

私一人、誰にも告げる相手も無く
ひたすら悩む数日を過ごしていた。


愛する夫に守られながら妊娠している
コアラちゃんに相談すれば
絶対に産むことをすすめるだろう、

ウサギちゃんならば
中絶を一度経験した彼女なら、
きっと両方の考えをもっているかもしれない、と

ウサギちゃんに相談してみた。




「そっか、、、なんて言っていいかわかんないけど、、


ただ、中絶すると、、後で後悔するよ、、、
ましてや、それが愛していた人の子供ならば、、


でも女一人で育てていくには、、、どうかな、、、」



現実を考えてみた。

もし母親の手を借りて日本で暮らせば
育てられないこともなかった。
だが、父親の居ない子を、ましてや籍も居れずに身ごもった子を
世間がどういう風に受け止めるだろうか、、
そんな体裁ばかり考えていた。

もしカナダで育てるとなると、
なにも手に職の無い私が、この英語のレベルで
職を探さなければならなかった。
そんな私が出来る仕事などあまりなかった。

それにビザも件もあった。

やはりカナダで
子供一人を立派に育て上げるなど
私には不可能だった。

もし、ディーンに話して、彼の遺産をいくらか分けてもらえば、、

それも考えたが、
そんなゆすりっぽいことを出来るはずもなかった。


八方塞だった。

もし私と違う、もっと強い女性ならば
きっと生む決心ができるのだろう、、、

私はそこまで強くは無かった。
彼との愛の形見であるそのこを
私は育てる自信がなかった。



ウサギちゃんの言葉を思い出していた。


「ましてや、それが愛していた人の子供ならば、、、」


産みたかった、
グラントの子供をどうしても産みたかった、、

だが、現実はそう甘くはなかった。



そんな私の悩みとは反対に、
お腹の子はすくすくと成長している、、、

早めに決断を下さないといけなかった。


彼さえいてくれれば、、

そんなことを何度思っただろうか、、、


そう、彼さえいてくれれば
私は幸せな妊婦だったのだ、、
愛する夫と未来の子供を待つ、、、
そんな幸せな女性だった。




「ごめん、グラント、、、」


私はグラントの写真に向かって一言いった。


そしてウォークインクリニックに向かう
身支度を始めていた。


第43話、春



クリニックの前まで来たのに、
入れずにいた。

入って予約を入れてしまえば全て終わりなのだ。

その“終わり”を決められず
一人ぐずぐずしていた。


ちょうどクリニックの斜め前にカフェがあった。
自分の心が決まるまで
そこでしばらく座ることにした。

中に入り、
飲みたくも無いコーヒーを頼んだ。

あんなに好きだった匂いが
今はむせ返るように私の胃をつつく、、
気分がかなり悪かった。


やはりこんな体の状態で誰の助けも無く
子供を産めるはずは無かった。

1時間ほどカフェで考えた後、
再びクリニックに足を向けた。

決心はできなかったが、
それ以外方法が無いように思えていた。


クリニックのドアに近づいたとき、
ガラスのドアの向こうに
見慣れた姿が目に映った。


ニックだった。


彼も私の姿に気づき、
びっくりしながら近づいてきた。


「幸子、、、」

こんなやつれた姿を見せたくなかった。
無理をして
笑おうとしたが、そんな元気もなかった。


「顔色が悪いよ、、大丈夫なのか、、」

ニックはいつもと変わらず優しかった。


「今からドクターに会うんだろ、、一緒に行くよ、
こんな幸子を置いていけないよ、」


吐き気とともに涙があふれてきた。

身も心も疲れていた中、
人の優しさを
敏感すぎるほど感じていた。


ふらついて倒れそうな私を
ニックはしっかり抱きしめてくれていた。


「ごめんなさい、、、」


私は、
嗚咽とともに言葉にならない音をだした。

私は彼を裏切り傷つけたのに、
彼はまだ暖かい腕で私を抱き続けようとしている、、、

彼と別れたことは後悔していないが、

彼を傷つけたことは忘れられなかった。


「ごめんなさい、、」


今度ははっきりと言葉にして言った。



「もういいよ、、、」


そういいながら、
ニックは私を抱きしめ続けてくれた。


「私、あなたに謝らないと、、」


「もういいよ、終わったことは、、」


彼は私の髪に顔をうずめながら言った。



「もう大丈夫だよ、僕がそばに居るから、、、」


彼のその言葉を聞いたとき、
全ての肩の荷が下りたような気がした。

大きな嵐で荒れすぎていた
私の心の中に
雲の隙間から太陽が顔を覗かせたような、
そんな感覚を味わった。







私の長かった冬はもう終ったのだろうか?

最終話、力 (りき)



その後
私たちは見晴らしのいいアパートを購入し、
一緒に住み始めた。


彼は私を愛してくれていた。

何度裏切ろうが
いくら彼を傷つけようが、

彼の愛は変わらなかった。




彼の愛は
私の父親の愛と似ていたのではないだろうか、、、




UNCONDITIONAL LOVE、

無条件の愛。








翌年の4月に
私はニックと結婚した。


そして
同じ年の6月に男の子を産んだ。



名前は

「力」

と名づけた。




どんなことが彼の人生で起ころうと
力強く生きていって欲しい
と、そう願ったからだ。



私は力とニックとともに
新しいスタートをきった。

                      幸子の日記4、終わり

                     幸子の日記5へ続く



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